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江戸文芸の中に「小咄」と呼ばれるジャンルがある。
話が短くて、笑いの中に人情や世相の様子をたくみにとらえ
結末をおかしさで結ぶのが特徴だ。
文体が簡潔で、軽妙洒脱、江戸っ子好みの歯切れのよい噺ばかりだ。
小咄とは、江戸で盛んになった笑話の呼び名で
それ以前、上方で盛んに作られた笑い話は、軽口話と呼ばれた。
今日では、両者を合わせて江戸小咄と呼んでいる。
なかなか味わいの深い話ばかりじゃよ。
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| NO.7 <柿と栗>
深まりも極まった秋の末つ方、ポツンと枝に残った柿の実が、横に並んだ栗の実に
「お前様は、幾重にも厚い衣に包まれて果報なお方じゃ。
私などは、身に着けるものといえばただの一枚。
寒さが深まるにつれて、赤い顔して、必死に力んでおらねばならぬ」
と、涙ながらにわが身の不運をかこつので、栗もすっかり同情し
「上を見ればきりがない。一重でも身に着けるものがあればありがたいこと。
下に生えた松茸をご覧じろ。
この寒いのに、ふんどしさえもしておらぬ」
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| NO.8 <草履が違う>
「どうしてもその女郎と手を切る気がないのなら、親子の縁を切るからすぐさま出ていけ!」
と、怒鳴りつけられた息子が、相手の女郎にありのままを話すと
「そんなら最初の約束どおり、一緒に死んでおくれ」
と持ちかけられて「いや」とも言えずに、
仕方なく死に場所を求めて枝ぶりのよい木を見つけいよいよ首をくくることになったが、
男が自分の縄を締まらぬように工夫して首にはめ
「それでは、まず俺から先に…」
と踏み台の石を足ではね、七転八倒の苦しみをの末に死んだ振りをしている。
それを見ていた相手の女郎は死ぬのが急に怖くなり、そ〜っと首の縄をはずして逃げ出そうとすると
死んだはずの男、薄目をあけて
「おいおい、それは俺の草履だよ」
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NO.9 <ものは言いよう>
殿様が、ご家老をお呼びになって
「これ、儀左衛門。もちっとそばによって、余の尊顔をとくと拝見致せ」
とおっしゃるので、儀左衛門が、おそば近くに進み寄り
「なかなか結構なお顔とお見受け致しまするが…」と、お答えすると
「さようであろう。でもな、人の口に戸は立てられぬと申すが
余の顔が<猿にそっくりじゃ>などと申すけしからんやつがいるそうな。
正直に申してみよ。まさか、わしは猿になど似てはおるまいな?」
そこで、儀左衛門、殿のお顔をじっくりと見改め大げさに口をとがらせて
「殿のお顔が猿に似ているなどとはとんでもございません!
似ておりますのは、猿めにございます」
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| NO.10 <しかった跡>
辻番小屋のわきで、小僧が立ち小便をした。
音を聞きつけて飛び出して来た辻番が
「馬鹿め!そんな所に小便をするやつがあるか!」と怒鳴ると
「どこでしようかと探していたら、丁度ここに小便をした跡がありましたので…」
と言い訳をするので、辻番、声とがらせて
「馬鹿め!そこは、たった今しかった跡だ!」
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| NO.11 <道楽息子>
くるわ通いの味を覚えた道楽息子が、
店の金を持ち出しては湯水のように使うので<これでは身代はひとたまりもない>と、
父親が息子を二階に閉じ込め、禁足を命じた。
それから数日たって、退屈しだした道楽息子が、
「手習いを始めたいから…」
と言い出したので、息子の気の変わりようを喜んだ父親が、
「それはよい心がけ」
と、紙とすずり箱とを差し入れさせた。
この息子、紙を継ぎ足し、暖簾を作り、丁子屋、竹や、蔦やなどと女郎屋の屋号を書いて
部屋ごとに入口にはりつけ、次々に部屋をのぞきこんでは
馴染みの女郎と話しているつもりになって、
独り言を言っていると、店の女中が食事のお膳を運んで来たので、
息子、あわてて
「いいか、おせん。こんなところで俺に会ったと、決して親父に言うではないぞ!」
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| NO.12 <若後家>
根気よく通い詰めて後家さんを口説き落とし
やっと一つ床で寝るところまでこぎつけて、さてかかろうとすると
後家さんが
「ちょっと待っておくれ」
と言って、布団の中から抜け出て行こうとするので
男があわてて
「おいおい、どこに行くのだ?」
と声をかけると、若後家、仏壇の前に進みより
「ちょっとの間、こうしておくのさ」と言って、
そっと仏壇の扉を閉めた。
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| NO.13 <お江戸八百八町>
「江戸に花をつけて、花のお江戸というのはなぜだか知ってるかい?」
「それは、江戸の賑々しさを花のはなやかさにかけたのさ」
「なるほど、お前さんは物知りだ。そんなら、お江戸八百八町とはどうゆうことだ?」
「それはな、江戸中で、一丁、二丁と一日におおよそ八百八丁くらいは豆腐が売れるってことさ」
「???」
<注>江戸八百八町とは、江戸が大都会で江戸の町数の多いことを示した言葉。
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| ●参考書籍:筑摩書房・山住昭文著[江戸のこばなし] |