お待ちかね艶笑小噺
落語の中に<艶笑落語>という分野がある。
<艶笑>というのは昭和に入ってからの言葉で古くは「バレばなし」と呼ばれたものじゃ。
言い換えればセクシー落語、品よく形容するならばお色気落語ということになるじゃろうか。
ここでは<艶笑>というより、もうひとつ濃度の高い、いわゆる「バレ小咄」を紹介しよう。

どれも良くできた楽しい噺ばかりじゃよ、わしゃ好きじゃ〜。
存分に楽しんでくれ。おぬしも好きじゃのう


NO.6 [ 居候(いそうろう)]

え〜、落語のほうで、居候ともうしますと、道楽がすぎて親父さんから勘当、てぇのが通り相場
でございますが、ここで、お話に出て来る居候は、いたって、ウブでございまして、女のこたア、
なンにも知らない。
行くとこなくなって、知り合いの夫婦もンの所へころがりこんで、小さくなって、三日目でございます。
夫婦もンのほうも、他人がはいって来ましたから、二晩ぐらいは辛抱しておりましたが、三日目
になると我慢ができない。

   亭主「おい、隣室の居候はねたかナ」
   
女房「シッ、大きな声だしちゃだめです」
   
亭主「そうか。じゃ、静かにナ、もっと、そばに寄んねえ……」
    
   隣の部屋の居候、ハッと聞き耳たてまして、あア、そばへ寄れと言っている。夜なかに、なんの
   
内緒話だろうと思っていると、そのうちにタンスの金具が、カタカタと鳴ります。
   
<あれはタンスの金具の音……夜なかに、タンスをあけて、どうするのだろう>
   
まどっているうちに、ご夫婦のほうは、もう、こらえきれなくなりまして、
   
   女房「あア、おまえさん、あたしゃもう行くよ……」
   
亭主「ちょいと待ってくんね、おれもいいっしょに行く行くえ……」
    居候、ガバッと布団の上に起きまして、腕ェ組みまして

   居候「はて、困った。おいらァ、明日ッから、どこへ行こう……」
NO.7 [氏神さま]

え〜、夏の夜なンぞは、寝られないままに公園など散歩いたしますと、あっちこっちの木陰なンぞで、よく若い男女が抱き合ったりなんぞしてましてナ、そんなのを見せつけられて、
かえって寝付かれなくなったりしますが……。
こんなのは、昔からあった風景で、昔はというと、村の鎮守のお社、氏神さまの境内なんぞが、
よく利用されたんですナ。今とちがって、めったに会えない。人目忍んで、やっとの思い
で会うんですから、会ったとなったら、さアたいへん。一度すませまして、用意の桜紙かなんかで、
始末しまして、始末したそばから二回戦。
こいつをまた始末しまして、また、次回がは
じまるってェわけで……。
そこへ、折悪くその神社の神主さんが回って参りましてナ

   神主「これこれ、おまえたちは、ここをどこだと思っている。えッ、神聖な境内で、何をして
      
おるのかッ!」
   ハッと驚いたが、苦し紛れに、言い抜けの知恵も出るもので
    男「ハ、ハイ、私どもは、この神社のためにご奉仕させていただいております……」

   神主「なに、奉仕じゃと?」

    男「ハイ、その、氏子をふやす作業をいたしておりますので……」
   ウ〜ム……と神主さん、詰まりましたが、ふと、この累々たる戦いのあとを見まして
   神主「ウム、氏子を増やすとは奇特だが、神社の境内にて、なンたることだ!」

    男「へ、へッ、と、申しますと?」

   神主「見ろ、このように、神(紙)を粗末にしておるではないか……」  

NO.8 [氏子中]

商用で、長いこと旅をしておりました亭主が、帰って参りますと、旅に出る前は、
ペチャン
コだったかみさんのお腹が、ふくらんでいる。
いまで申しますと、浮気のあげくの妊娠てえ奴ですから、こりゃァ亭主が怒るのは当たり前

   亭主「やい、やい、相手の男は、どこの誰でえ?」
   
女房「変な疑いは、よしておくれよ。あたしゃネ、おまえの留守中、神田明神へ日参して
      <ど
うぞ、子供がさずかりますように>って、お願いしてたんだョ。
       これは、氏神さまの子
だよ……」

    でんでナ、白状なんぞいたしません。そこで、亭主ァ、家主に相談をする。

   家主「じゃァなァ、その子が産まれるとき、荒神さまのお神酒でナ、胞衣(えな:胎児を包む
膜)
      を洗うんだ。そうすると、胞衣に各家の家紋が現れる。
      その紋の男が相手にきまっ
ている……」

    てんで、知恵ェさずけた。亭主はよろこんで、出生を待って、その通りやってみると、
    あり
ありと現れた文字が
    
    「氏子中」……
NO.9 [ 壁まら]

  甲「えッ、おう、見てみろイ、ここァ伊勢屋の妾の寮だぜ、今度新築しやがった……」
  
乙「フーン豪勢な家ィたてやがったナ、なんでえ、この壁ァ……。え、真っ白な白壁じゃァねえか。
    シャクにさわるなア、まったく……」
  
甲「どうでえ、ひとつイヤがらせに落書きでもしてやろうじゃァねえか……」

    ッてんで、職人が二人、矢立てを出して墨黒々と落書きをしてまいります。

 女中「あッ、ご寮さん、ちょっとごらん遊ばせ。壁に、こんな、松茸の落書きがしてあります
わ……」
  
妾「ま、やだねえ。今日は旦那が来るはずだから、これを見られたら、どんなにごきげんを
    
損ずるかも知れない。急いで左官の熊さんを呼んで、上塗りをしてもらっておくれ」

  上から塗り消しておきますと、翌朝、

  甲「おい、もう、塗り直してけッかる」
  
乙「フーン、生意気なやろうだ。もっぺん、書いたれ、書いたれェ……」
 
女中「……あら、ご寮さんご寮さん、また、書いて行きましたよ、昨日より、もっと大きな松茸を……」
  
妾「ほんとにしょうがないわねえ。旦那は昨日来るといって来なかったから、今日はきっと
    
来るに違いない。早く早く、熊さんを呼んで来とくれ……」
     
  そのまた翌朝……。

  甲「見やがれ、また、壁を塗り替えやがったぜ……」
  
乙「よオし、こうなりゃこっちも男だ、ひっこんでたまるか。壁いっぱいに書いたれ!」
     
  てんでナ、壁いっぱいに大きな松茸を書いて行く。
  
 女中「まーア、ご寮さん、今度は、壁いっぱいに大きく書いて行きましたヨ。左官の熊さんを
    
呼びましょうか?」
  
妾「もう、やめにおし」
 
女中「あら、どうしてですの?」
  
妾「考えてごらん、松茸は、サワればサワるほど、大きくなるんだよ……」

NO.10 [ かわらけ ]

え〜、あそこンとこに毛のないのを、土器(かわらけ)と申します。
むかし、廓があったころ、このかわらけの女郎なんぞを買ったりすると、職人衆なんぞ
   

   職人「お毛が(お怪我)なくって、めでてえや」

   なんてんで、喜んだものだそうで……ところが、素人の娘さんでは、話が違います。
   
あるご大家のお嬢さんですが、年ごろになって、器量なんぞは申し分ないのに、
   おしいこと
に、あそこンとこだけがノッペラボウ。

   かわらけはさっぱりとした片輪なり

   という川柳もございますように、ご本人より母親のほうが大層気にいたしましてナ、
   神さまに
願をかける。
   
三七二十一日満願の日に、お参りをすませて帰って参りますと、夏のことで、
   奥の座敷で娘
さんが昼寝の真っ最中。暑いもんですからナ、大の字になって前ェおっ広げて……。
    
    母「まアまア、なんという娘だろう……」

    と、おっ母さんがヒョイと見るてえと、あそこのまわりが真っ黒ケのけ……。
    
    母「あっ、生えてる!あア、ありがたい、神さまのご利生があらわれた……」

   母親、涙にかきくれておりますと、いくら夏でも、ゴロ寝していると寝冷えをします。
   腹中
にガスが、その……発生しますナ、ムズムズっと娘さん身動きしたかと思うと、ブーッと一発。
   
とたんに、真っ黒なものが、ワーンと、どっかへトンでっちゃった。毛と思ったのが、
   タカっ
てた蝿だったんですナ。

    母親、思わず、ガックリして

    母「あアあ、百日の説法、屁ひとつ!」