岡場所とは公認の吉原以外の歓楽街のこと。
これは品川を舞台にした噺。
品川新宿の女郎屋でナンバーワンのお染。
しかし、歳とともに客がだんだんつかなくなり、若い女郎にまで金のないことを馬鹿にされる始末。
いっそうのこと死んでしまおうと考えた。ただ、見栄があるから金がなくて
死んだなどとは思われたくない。
そこで、誰か相手を見つけて心中しようという気になった。で、選んだのが金蔵という
独り者のお人好し。お染から手紙をもらった金蔵は、すぐに飛んできた。
四十両の金ができないから死にたい、一緒に死んでくれと頼まれた金蔵。
自分の力ではどうにもならない金だから、わりにあっさりと心中の相手を引き受ける。
決行は明晩ということになり、お染は気が変わらぬようにと、その晩はひときわ濃厚に金蔵の相手をした。
翌日、家の始末をし、世話になっている親分の家へも挨拶をすませた金蔵が、夕方、品川に戻ってきた。
ところが心中用に用意した刃物を親分の家へ忘れたことに気づく。
そこで、裏の海に飛び込もうということになった。
金蔵が先に海に落ちたところで、店からお染を呼ぶ声。なじみの旦那が金を持ってきてくれたのだ。
金ができたから死ぬことはないと言われたお染
「金さん、堪忍してね」
と、あっさり店に引き返してしまった。
海の中にいた金蔵、くやしまぎれに足を伸ばすとなんと膝までしか水がない。
遠浅で死ぬどころか着物がビシャビシャになって風邪を引いただけ。
岸へあがった金蔵は、帰る家もないので親分の家へ行くことにした。
濡れネズミなので大きな犬に吠えつかれたりしながら、やっとの思いで親分の家に着き、
表戸をドンドンと叩いた。間の悪いことに家の中では花札賭博の真っ最中、
手入れと勘違いして上を下への大騒ぎになる。金蔵と判って安心した親分。
話を聞いて仕返しの芝居を思いついた。まず、金蔵がお染のところへ生き返ったと顔をだす。
そのあとから親分がいき、夜釣りで金蔵の死体がかかったからお通夜にきてくれと言う。
「お染はそんなはずはないだろうという。で、通夜にいくと部屋に位牌があるって寸法だ」
たくらみにまんまと引っかかったお染。
親分に金蔵を成仏させるには髪を切れと言われ、仕方なく髪を切って差し出す。
そこへ隠れていた金蔵が出てきて、
「仕返しだい」
「ちくしょう、髪を切らして、明日から商売ができないじゃないか」
「へん、あんまり客を釣るから比丘(魚のビクと尼の比丘をかけて)にされたんだ」
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